if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
あの雨の日、私は俊に会ってしまった。私が俊の子供を妊娠している事まで知ってしまったら、優して責任感のある男性だから、私を放っておけなかっただろう。
愛しい瞳が、私の目の前にあった。
いとも簡単に手に入りそうな、そんな俊の眼差しから目を背けた。
駄目、いま瞳を見れば涙が溢れてしまう。
私の決心が崩れてしまうから、お願い、私の前から・・・姿を消して。
俊に言った「主人にはみられたくない」の拒絶の言葉を用意して、
貴方を傷つける私を嫌いになって欲しい。
父から俊がアメリカに行くのだと聞いた。そして二度と日本には戻らないと。
震える手で自身の掌を握りしめる。悲しさと寂しさで涙が止まらなかった。
私を嫌いになって欲しいと願い、関係のない所で生きると決心したのに、それでもそんな事を聞いてしまうと、私は冷静でいられない。
渡米すると聞いていた日に、”シュン”と登録したままのスマホから鳴り続ける着信音に、驚きと戸惑いを感じ
最後だから きっともう逢えないのだから、
愛する人の声を最後に耳に留めたい
私は俊の電話を取った。
あなたの優しく静かな低い声を耳にしただけで、とめどもなく溢れる涙
もう二度と逢えなくなる俊に、気持ちを伝えてしまいたい。
声にして言えない「愛してる」の言葉を何度も呟いた
良いの? 本当に・・本当にこれで最後にして?
涙が止まらなかった。