if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

「ねぇ!俊センセイ!アレ見て! すご~い美味しそう!」

地元の子供達が手に持つアイスクリームを見て騒ぐ舞子に 苦笑いしてしまう。
だって、ほんの数時間前は、僕を誘って来た子なんだから・・

ロンバードストリートの坂を上り、下るときに見えるアルカトラズ島
路面電車が真ん中を走り、時間もゆったりと過ぎていく感じがする街だ。

「俊センセイ、あの電車に乗りたいッ! TVなんかで良く見るのだわ!」
『はいはい、書類置いてレンタカー返して、そしたらちょっと観光してみよう』
「わぁ~~ホント?! 」

舞子の喜び様はまるで小学生並みで、思わず笑ってしまう。

路面電車(ケーブルカー)に乗って風を感じる。チンチーンっていう鐘の音、僕も舞子も立ち乗りで坂の下りに差しかかった時は、やっぱりジェットコースターが下りに差しかかった時と同じ感覚になる。
ステップに立っている生身の自分の横を乗用車が走り抜けていくのはスリリングだった。

大きな交差点で停まった時に舞子が突然、僕の手を引っ張り降りたんだ。

『わぁ!危ないよッ』
「大丈夫よ、ねぇ、あっち!」
『何?』

舞子が指差したのは、通りにあるオープンテラスのあるカフェだった。


「もう、お腹ペコペコなの~ッ! 何か食べさせて~」
『良く、食べるね』
「だってぇ・・」


そう言って僕は笑うと、舞子は顔を真っ赤にして口を尖らした。





< 165 / 246 >

この作品をシェア

pagetop