if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

ベイエリアラピットトランジット、通称バートと呼ばれる電車で、市街地からサンフランシスコ空港まで行くそのバードは、サンフランシスコ湾を取り囲むように、サンフランシスコ国際空港の南ミルブルーから、北のサンフランシスコ、リッチモンドそして、湾を挟んで反対側のオークランド方面まで走っている。

とっても海の色がキレイで、その蒼さに見とれてしまう。
僕の横でつり革に掴まった舞子が目をキラキラさせながら言った。

「日本の海よりキレイだわッ!ああ~ッ カメラ持ってればなぁ」
『うん、本当にキレイだね』

そう言った僕を見上げてくる舞子が「ねぇ、俊センセイ、海って好き?」
『・・うん、好きだよ』

舞子が僕のその答えを聞くと、嬉しそうに僕をみてから海に視線を移した。
女性の前で”好き”という日本語を口にしたのは、本当に久しぶりで、照れてしまう自分がいた。


空港に着くと、舞子の分の飛行機チケットを購入しなくちゃならない。パスポートを出して、フルネームで舞子がサインをする。僕は横目でそれを確認しながら、ちょっとした偶然に過去を思い出した。

”オオサワ マイコ”?


オオサワっていう苗字に、心の奥底に無理やり押しやり
蓋をした 薫の事を思い出す。

あの後・・どうしてるだろうか?
すでに子供は生まれてて、ご主人と幸せに暮らしてるだろうか。
そんな事を思ってしまう

ボーっとしていた僕を不思議そうに見る舞子に、
我に返り苦笑いをして誤魔化した。


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