if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
彼は私の声に反応するかのように、少しだけ手の力を緩めてくれた
私の髪に顔をうずめ、大きな手が優しく頬を撫でた。
顔を上げた瞬間、俊と視線がぶつかって、その瞳の中に私が映っていた。
どうしよう・・・・涙が溢れて
頬につたう涙を 彼の手がそっと拭ってくれた。
「ごめんなさい。私、、」
そう言ってから、彼に背を向ける。そう泣くなんて駄目だから。
私を後ろからそっと抱きしめてくれる俊の懐かしいぬくもりに涙が抑えられない。
『謝る事はないよ。君が悪いんじゃない。僕が、僕が悪いんだ。薫を僕は君が忘れられない、、ごめん、こんな事を言うべきじゃないのも解ってる。でも、今でも君が欲しくてたまらない』
私の耳元で彼の囁くような声が聞こえる。私は返事もできず、ただ俊に背後から抱きしめられたまま。
『君が誰かと幸せにしてるって思うようにしてきた。でも、、もう耐えられない。君にこうやって逢えれば、僕は必ず君を僕のモノにしたいんだ。誰にも渡したくない』
「でも、あの、、私は」
『薫、君を帰したくないし、君を離せない。君は僕を忘れてた? 僕を嫌いになった?』
私は俊の言葉にゆっくりと首を横に振った
『今でも僕を少しでも好きでいてくれてる?』
「俊、お願いだから、、許して」
これ以上、彼の言葉を聞けば、私の気持ちが揺らいでしまう。
私は彼に応える資格がなくなったのだから。そう、彼と始めるという事は迷惑をかけるのが目に見えてる。
だからこそ、あなたの将来に関わっちゃいけない、そう何度も考えたじゃない。
私は彼を振り切るように俊から離れようとしたのに、後ろから抱きしめられた腕はビクともしない。私の首筋に唇を寄せる彼を諫めようと彼に振り返り、目にしたのは。
彼の伏せたまつ毛の先はわずかに濡れていた。