if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
俊がタクシーの運転手に言った行き先は、私のマンションの住所だった。
何で私のマンションなの? さっき部屋に行くのを拒んだから怒ってる?
俊をみて、そんな事を思っていたら、優しく微笑んでくれた。
『僕の勝手な思いで君を迷わせているよね。今、すぐに来てなんて言って、家には家族が待ってるんだろ? マンションの下まで送るけど、せめてその間だけはこうやって・・ね』
繋がれた手に力がこもると、とられた手の温かさを意識する。
胸が張り裂けそう。
「俊、怒ってるの? だから?」
『いいや違うよ、怒ってなんかいない。 何か自分が情けなくてさ』
「情けないの?」
『うん、舞ちゃんの事にしたって、僕は彼女を妹のように接して来たんだ。だけど、彼女の想いは違うんだよな。薫、ごめん、君の妹だって知ったのが、ちょっと前だったんだ。本当はその時にちゃんと言うべきだったのに、ほんのさっき、君と恋人同士だった事を話したばかりなんだ』
「舞子はずっと知らなかったの?」
『偶然にね、僕も舞ちゃんも自分の事なんかは話してなかったし、、そんな関係にするつもりも僕はなかったから、でも、知ってからきっと舞ちゃん、傷ついたって思うんだ。だからあんな事を、、』
「・・舞子は、俊が好きなのね」
薫が俯いて表情を曇らせた
『僕はきっと、舞ちゃんをもっと傷つける事になるな、、、それに君も』
そう言う俊を見上げると、彼の瞳が心配そうに私に語りかけてくる
”君は・・どうなの?”
俊が私に遠慮がちに言った
『子供は自宅? ご主人も?』
「あっ、ええ・・」
『薫の帰りを待ってるかな?』
心が揺れた、俊のその寂しそうな表情に、本当の事を伝えてしまえたら。