if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

義母は とっても不安そうな表情で私にそう言ってくる。彼女なりに父の事を
心配したんだろうし、確かにこのまま帰っては 本当に親不孝な娘だって思う。


「ええ、それじゃ、そうします」
「良かったわ。薫さん、こんなトコじゃなくてリビングに行きましょう」
「あの、私の部屋に行っても良いですか?」
「薫さんのお部屋?ええ、そりゃそのままにしてますから」
「ごめんなさい、後でお風呂を借りますね」


会釈すると2階の階段を上って、自分の部屋のドアに手をかける
義母と二人だと、なんだか居心地が悪い。分かり易い嫌な言葉や態度は、一度も
されたことがない。もう十分に年月を重ねたのだから、とっくに分かっている。
義母は優しい女性だって事が。

大学に入ると同時に 父に我が侭を言って独り暮らしを始めた。異母姉妹の
舞子が8歳で、目の前で義母に甘えている姿を見て自分の母を思い出した。

あの頃は父親が大嫌いで、私や舞子に優しく接する父を毛嫌いしていた。
言葉には出さなかったが、義母への嫌悪感も態度に出ていたのだろう。
だからなのか、独り暮らしは反対されることもなく、セキュリティー効果の高い
安心できるマンションを与えられた。

高校生の頃に使っていた学習机の上に、舞子と撮った写真があった。
笑顔の舞子、姉の私によく甘えてきて、そんな舞子を可愛いとは思った。
去年、大学生になったからお祝い頂戴って突然に電話が来て驚いたけど、
最近は会っていない。

舞子の部屋は隣のはず、ただ物音が聞こえないから
出かけているのだろう。
父親に付き添っているんだろうか?

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