if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
3年前のあの忌まわしい事件があった当時の事が思い出された。
当直室で目覚めた薫の目にしたメモ書きには俊と別れなければ、俊にもそれから俊の家族の命まで狙うと書かれてあった。薫は震える手でそのメモ書きをバックにしまった。朦朧とした意識の中で、自分に起きた事実を思い出していた。
何度も何度も声を出そうとした。
だけど声にならない。あの男に身体を触られ無理にキスされて、かすかな力を振り絞って顔を背けると何度も何度も顔を殴られた。
遠のく意識の中、男の息遣いが耳に残っていた。私は抵抗する力を失くし身体を自由に弄ばれた。全身に残された紫斑は特に手首が腫れも酷くて、それを見て当時の私は”死んでしまいたい”と思っていた。
慌てて、大学病院を出ると、違う病院で医師の診察を受けた。
屈辱的だったし涙がとめどもなく溢れて、だけど そこで思いがけない事実を耳にした。
「妊娠していますね、HCG反応が陽性です。まぁ、今回の事が原因だというのはないと思いますが、、どうします?このままで?」と診察している医師が言った。
「あの、どういう事ですか? このまま、、と言うのは?」
「ああ、すみません。経膣プローブで確認しますね」
私は診察の間に 医師の言った言葉の意味を考えた。
「最終月経から計算すると8周ほどだと思います。子宮内にはしっかり着床してるようです、、今のところ、胎児には何の影響もないと思われます」
私はそう説明する医師に聞いた
「あの、先ほど、”このままで?” と私に聞きましたよね?あれはどういう意味ですか?」
その医師は頭をかきながら、困った顔になると私に言った
「すみません、こんな事の後に妊娠を継続させる事は少ないですから、大澤さんにご主人や愛する方がいられる場合であれば、これは一般的な事ですが、きっと、この妊娠を望まれるか、どうか、、まぁ、人によって考え方は違いますが」
「そうですよね、よくわかりました」