if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

証拠を揃えて警察へ向った。すぐに犯行は調べ上げられ、大月先生と坂上教授は逮捕された。

この子が産まれて来るまでは 本当に毎日が不安で寂しくて、妊娠初期にはつわりが酷く妊娠悪阻(にんしんおそ)と病名がつけられ何も口に入らず入院までする羽目になった。
それでも この子が無事に産まれてくる事を願い、やっと少し落ち着いて退院出来た頃に偶然にも俊と再会した。

俊から決別した私が咄嗟についた嘘に彼は傷つき、その嘘を信じて日本を離れた。
渡米する日にスマホに浮かぶ俊の着信に、胸が張り裂けそうな気持になる。
鳴り続ける着信音に ”もう、二度と彼の声が聞けない” 
そう思った時、私は彼からの電話に応えた。

最後に私の声が聞きたかったなんて言葉をいうあなたに、堪えていた涙が溢れて嗚咽を我慢して声をつなげる。
「元気で、元気で頑張ってね」
『うん、君も、薫も元気でね、元気な赤ちゃんを産んでくれよ! いいな?』
「うん・・うん」

こんな時にあなたに伝える言葉が浮かばない。
さようならの言葉を最後に愛が消えた瞬間だと思った。
たとえ、これから偶然に会うことがあっても、あなたの中に私はいない。そう思っていた。

優人が産まれた日、義母が私のそばにずっと付いていてくれた。
”薫さん、頑張って、ほら、元気な赤ちゃんを産まなきゃ!
あと、もうちょっと頑張りましょ!”
「痛い・・」
”赤ちゃんも頑張ってるんだから、薫さんも頑張るのよ”
そう言って私の腰をずっとさすってくれた。
陣痛に負けそうになる私をずっと励まし続けてくれて感謝した。

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