if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
僕の実家に着くと、母さんはもとより父さんまでが優人にメロメロだった。
僕の父さんは近所でも有名な頑固者の医師で通っていたし、そんな父さんが孫に目を細めてニコニコしてるだなんて考えられない。
よく”孫は目の中に入れても痛くない”と聞くが、無条件に可愛い存在なんだそうだ。母さんに至っては優人を抱っこして離さない。
最初こそは緊張していた父さんが、薫に「お父様」なんて言われて微笑むだけで頬を赤くするのは、どーなんだろうか?何となく納得できない。
和やかに夕食を済ませた後、僕が風呂に入ってる間に父さんと薫はリビングにふたりだけになったらしい。そこで父さんが言った言葉がまた薫の瞳を潤ませたらしい。
「薫さん、優人を産んでくれてありがとう。俊を選らんでくれてありがとう」
「お父様、、」
「私はね、気が利かないし口下手なんで上手い事は言えないが、薫さんにお礼がなかなか言えなかったからね。今のこの幸せは薫さんの痛みや苦しみがあっての事だと私たちはわかっている。本当に辛い思いをさせて本当に申し訳なかった」
俊の父親である片瀬勇が薫に頭を下げた。
「そんな、、お父様、私は何も・・」
薫は父さんにそう言われてどう答えて良いのかわからず、手を振りながら”とんでもない”という素振りをみせたそうだ。薫は笑顔で僕にそう言って来た。そして、こんな事も言ったらしい。
「しかし君は本当にウチのに似てるね」
父さんの言葉に薫が首を傾けて不思議そうな表情をしたら、ハッとしたように父さんが言ったそうだ。
「あはは、、そりゃ容姿は薫さんの方が美人さんだよ。」
「そんな、美人なんて、、でも、お母様に似てるって、嬉しいです」
父さんは困ったように頭を掻きながら言ったそうだ。
「ウチの家内もね、彼女も私や家族のタメならどんな痛みも苦しみを受けても、自分は何もしていないって言うんだ。そんなところが君にそっくりだってね、、」
そうだよね、母さんも色んな苦難にあっても、まるで他人事の様に自分の痛みや苦しみは笑い飛ばしてしまう。きっと父さんはそんな所を薫が似ているなんて言ったんだろう。