if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
『名前、田中さんだったかな?』
「物覚えが悪すぎです! ケイコですよ。片瀬センセイとはキスする仲じゃないですか!」
目がテンになる。大声でそう叫ぶ田中ケイコさんに僕も叫んだ。
『いや、あれは事故でしょ! 田中さんが酔ってる僕に、、』
「もう~片瀬センセイったら、照れないでぇ」
『照れてるわけではなくて、、はっきり言うけど、田中さんに興味はないよ』
「・・とにかく、お部屋に入れてください」
僕の言葉に飄々とした態度で首を傾ける。何度言っても効いてくれない。
「好きなんです。センセイになら何をされてもイイから」
そう言ったと思ったら、玄関のドアを思い切り開けて
僕をすり抜けるようにして部屋に入って来た。
『おい、コラ待て!』
日々生活していると、自分がミスを連発してしまったような事ではなくとも、
周囲からの自分へのアプローチや見えないプレッシャーがストレスの原因と
なって「ついてない…」つい、呟いてしまう事ってあるだろう。
まさに、僕にとっては、今がその時で。
また、引っ越しを考えないとマズイなぁ
マンションに突然押しかけて来た田中さんは、部屋に勝手に上がり込んでしまったけど、僕の説得で、何とか納得してくれて帰ってくれた。
仕方がないが、脅しみたいにして諦めてもらうしかなかった。
『今度、こんな事をしたら病院関係者にも知らせるし、君は処分されるだろう、
そんな風にしたくないから、職場だけで会おう』
「でも、本当にセンセイの事、好きなんです」
瞳を潤ませて田中さんは、そう言うけど。
『悪いけど、それには応えられない。それに僕にも好きな女性がいるから』
好きな女性なんて言う言葉、今までに断る口実で使った事がない。そう言ってしまった自分に思わず自嘲する。しかし、彼女は等々、涙をみせて頷いてくれた。
「何度も、ダメだって思ったのに、、ごめんなさい。
少しだけでも、センセイの傍にいたいから、、病院だけで我慢します」
そう言うと帰ってくれた。
まだまだ、問題がありそうだけど、ひとまずは良かった。