if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

慶生大学を訪れて主任教授から言われた事を忘れているわけではなかった。
しかし、自分がアクションを起こす前に、病院長から呼び出されるとは
思ってもいなかった。
僕の勤める市中病院長は、この間僕を呼び出した主任教授の後輩で
頭が上がらないらしい。

「片瀬先生、悪いけど病院を辞めてくれ! 事情はわかっているだろう?」
『・・・はぁ』

病院ではそれなりに患者さんにもスタッフにも好感持たれて一生懸命に真っ当に
医者をしてきたはずだ。
僕を含めて、病院長もあの主任教授に睨まれたら、まともに仕事が出来なくなるんだろう。

日本の端の離れ小島に行って医者になれば問題ないだろう
でもね、僕には本当に努力して研究して育ててきた技術が大事だ。それで多くの命が少しでも助かってくれるなら、努力してきた甲斐がある。
これは離れ小島では絶対に出来ない事なんだ。
心カテはそれなりの最新の機材、器具が必要で、ましてや症例患者が多くなければ、技術の進歩もないし研究も出来ない。

病院最後の夜、循環器病棟の看護師長さんが送別会を開いてくれた。
新宿の超高層ホテルの41階にある店で、普段世話になった看護師やコメディカルのスタッフが揃っていた。


「今夜はハメを外すまで飲みましょーう!」

看護師長が皆を煽るような声をあげた。
飲めや歌えやで、いつもは押し込まれた自身の感情を溢れさせるかのような 
飲みっぷりに騒ぎっぷり。医療関係者の飲み会はうるさい。

もう、皆がハメなど外れる一歩前だった


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