if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~
大学の職員用駐車場へ、ふたり並んで歩き出す
僕が前を歩くと、薫は少しだけ歩みを緩めて、立ち止まってしまう
『ほらッ・・行こう』
「片瀬先生、私やっぱりタクシーで」
『何言ってるんだよッ! せっかく僕の車があるのに、
正体のわからない他人じゃないだろ?』
彼女はためらうように口を開いたが、立ち止まる薫の前に手を差し出す。きょとんとしているから、僕はクスクスと笑いながら彼女の手を引いて歩きだす。
エンジンをかけると静かなで真っ暗な駐車場が明るくなった。音や動きで働きだす人感センサーだが、無人カメラが僕の車の方に向いている。
アクセルを静かに踏むと駐車場を後にした
『ははッ、突然に灯りがついて、カメラまでが廻ってたね。
何だか後ろめたい事をしてるわけじゃないのに嫌な感じがするなぁ~』
「悪い事が出来ない様にイロイロ装備されてるんですね」
薫のその言葉に 少しだけジョークを言ってみた
仕事場を離れれば、僕と彼女は、ただの男性と女性なのだから。
『そうだね。ところで君はそんな装備がついてる?』
「えッ? 私ですか?さぁ・・どうでしょう?!」
『もしも、悪い事ができないような装備がついているなら、
早めに教えておいて欲しいなぁ・・』
「タイミング次第でしょうね」
意味深な言葉を言う彼女に 僕は少し微笑んでみた