if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

高速道路を走り始めて暫くすると、薫が急に黙り込んでしまった。
チラッと顔を見ると、瞼が下がってきている。

そりゃ・・疲れていただろう
薫だってずっと僕と一緒に検査や患者を診ていたから。

入局してから、外来と検査や治療をこなして勝手の違う場所での業務は気も遣う
だろう。普通ならもう嫌だって泣き出したり、我が侭言う女医が多い中で
彼女は文句言うどころか、しっかり僕にあわせて業務をしていた。
きっと今までも優秀だったんだろう
女性だって事で脚光を浴びていないが、男だったらと思うと怖い程だ。

坂上教授が言っていた、スパイまがいの事なんて
今の薫をみていたら、考えもつかない。



僕は一旦、パーキングエリアに車を停車させてから、車の屋根をクローズする。
静かに車を降りて煙草に火をつけた。

疲れていたのに眠気がない。
今のこの状況がちょっと嬉しくて、楽しい気持ちなんだ。

何を楽しんでる?
彼女でもない女性、それも同僚とわざわざ高速飛ばしてまで普通に一夜を共に
する女性なら、こんな面倒な事はしない。きっと近場のイルミネーション
スポットに連れて行って、互いに盛り上がればホテルに行く。

なぜ、薫にはそうできないのか。
助手席側の窓に視線を向け、薫の寝顔をみて微笑む


あの山のてっぺんに展望台があって、そこからは満天の星たちが見える
いつの頃だったか、そこであまりの星の多さに感動した事があった。

そこに行くつくまで真っ暗な山道を走る
横を見下ろすと眼下には、小さく街の光が見えた

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