if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

次の週の始まりはいつもと同じで、何ら変わりのない状況だった。顔を合わせ
ても、普通に挨拶を交わし、別段何か甘い言葉を囁いてくれるわけでもない。
とにかく仕事も忙しくて、プライベートな話なんて皆無だ。

だけど、あんな事があった後で優しい言葉のひとつぐらい期待してしまう
自分が恨めしい。


”そうね、そうよね。やっぱり愛なんてないよね”
自分にそう言い聞かせるけど、ため息しかでない。
俊と病棟の若い看護師さんの会話に耳を傾ける私の耳は、今フル活動中だ。

「片瀬先生からシュークリーム戴きましたー!」
『うん、それ患者さんからの戴き物だからね』
「先生は食べないんですか?」
『ああ、甘いモノは苦手だし、それに後でカメラ検査でね』
「えー-!胃カメラですか?」
『まあね』


そうか、今日検査出来る事になったのね、良かった。 そう思って俊の方をチラッとみると目が合った。何だか恥ずかしくて慌てて目を逸らしてカルテに視線を向けると、俊が私の方へ歩いてくるのがわかった。

『大澤先生、君もシュークリームどうぞ』

ゆっくりと俊と目を合わせると笑顔が近い。ありがとうございますと伝える
前に、俊の後からカツカツとヒールを鳴らす音が近づく。

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