if...運命の恋~エリート循環器医は彼女を手放せない~

数日後、午後の心カテは散々だった
予測していた病変部位が広がっていて、一人では対応できるものではなかった。
最近は、俊だけじゃなく大月先生や他の循環器の先生と検査や治療をする事も多くなっていたから、今日は大月先生にアドバイスをもらいながらのカテを何とかこなした。
精神的にも身体的にもクタクタになっていたので、カテ室から出るとやっと安堵の表情を浮かべた。
大月先生が、腕を組み少し首を傾け怪訝な顔して言葉をかけてくる。


「疲れてるねぇ どうしたんだい?」
「えっ?・・いいえ」

いやいや、これだけ仕事したんだからそりゃ、疲れますよ。って声にはできないけど、苦笑いで誤魔化そう。

「薫先生はお酒が飲める?」
「そんなには、、」
「まったくじゃないだろう?早いうちに君の歓迎会をしないとね」
「そ、そんな歓迎会なんて」

やんわりと断ろうとして、なんだか会話の矛先がとんでもない方向に向かう。

「お酒を飲むと歩けなくなるとか? それなら、どこか出かけて
”お泊まり付き歓迎会”がいいね」
「お泊り付き歓迎会?」
「あははッまさか皆でだよッ!! 何か誤解させたかな?でも、薫先生なら
僕はいつでもお付き合いしますよ」

大月先生までもが 私にそんな誘いをするから私がとっても不審な顔を
したと思う。慌てて大月先生が ”みんなで”と付け加えて頭をかいた


「それでなんだけど、大澤学長のお加減はどう?」
「はい? ええ、おかげさまで随分体調が戻ったようです」

「あッそう・・良かった。学長に、大学は大丈夫ですからと、
ねぇ、薫先生もいるし、ご心配なさらないようにお伝え下さい」
「はい、どうもありがとうございます」

大月先生はどこか不敵な笑みを浮かべて部屋を出て行った。私に優しく接してくれているけれど、時々すごい冷たい目をして見られる事がある。
”片瀬先生と同期だし、それに永遠のライバルなんですよ” 
なんて研修医達が言ってたけど。

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