御曹司の溺愛から逃げられません
「こ、ここです」

電車を乗り継ぎ45分。
ようやく目的のお店の前へ着いた。
可愛らしい絵本に出てくるような温もりある木の小さな家で、課長が本当にここへ入るのか私が困ってしまった。

「うーん、なかなか可愛いお店だな」

ですよね……。
私もそう思います。課長には似合わないお店です。スタイリッシュなお店でなく申し訳ない。

「ち、違うお店にしましょうか。流石にここのお店に入るのはちょっと、ですよね」

「でも美味しいんだろう? 柴山は俺とはいるのが嫌か?」

「そんなことありません。でも課長の雰囲気には合わないですよね」

約束したと言われたので連れてきたが、失敗だった。どうしたらいいか悩んでいると課長はさも気にしないような素振りで入店を促してきた。

「柴山が俺とで嫌ではないのなら早く入ろう。店の前でこうしているのは迷惑だろ?」

そう言うとまた私の背中を押して、店のドアを開けた。
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