御曹司の溺愛から逃げられません
「あの……この後も?」

「あぁ。もちろんだ」

今日の課長はベージュのセーターにダークグレーのチェスターコート、黒のパンツで雑誌から出てきた様に素敵だ。加えてこの眉目秀麗な顔は周りの人の目を惹きつける。
そのため先ほどから私たちを見る視線を感じて居心地が悪い。

「せっかくのお休みなのに私と出かけるなんて……なんというか、申し訳なくて、それで、ここからは別がいいというか」

「俺と出かけるのはそんなに嫌だったか?」

「いえ、そういうことではなくてですね。いたたまれないといいますか……」

しどろもどろになっていると課長はさらに尋ねてきた。

「せっかくの休みなのでたまにはゆっくり過ごしたいと思ったが迷惑だったか?」

「私が誘ったせいでかえって課長に迷惑をかけてしまったのではないかと思って」

「迷惑ではない。昨日から楽しみにしていたんだ」

楽しみに? 本当なのかしら。
窺うように彼を見上げると頷いていた。

「それと今日は休みなんだから課長と呼ぶのはやめてくれ。友人として名前で呼んでくれないか?」

「まさか! 名前でなんて呼べません」

焦って大きな声になると周りが私を見てきた。
課長はそっと私の背中に手を当てると優しく移動を促してきた。
背中に当てられてた手は離れることなく、隣に並んで歩くだけで彼からいい匂いがしてまたドキドキしてしまう。

「今日はプライベートで、友人として楽しまないか?」

彼に優しく諭され、私は頷いた。

「友人からは瑛太と呼ばれているからそうしてくれると嬉しいんだが」

「え、瑛太さん」

思い切ってそう呼ぶと彼は嬉しそうに頷いた。私は名前を呼んだだけで恥ずかしくて顔が火照ってきた。
< 17 / 101 >

この作品をシェア

pagetop