御曹司の溺愛から逃げられません
嫌な空気は無くなったが、どことなくお互い意識してしまってぎこちない。
彼に褒められて内心嬉しくて仕方ない。それにワンピースを覚えていてくれて嬉しかった。

ハンバーグは評判通りとても美味しく、会話の糸口ができいつも通りに戻った。

「この後はタルトだよな? でも意外とハンバーグが重かったな。また少し歩かないか?」

「はい」

お会計はまた彼が済ませてくれ、私たちは近くにある公園へ向かった。
ここはテレビでもよく見かけるところで実は来てみたかった場所。

「寒くないか?」

12月も半ばになり外の空気はひんやりしているが昼間はさほど寒さを感じない。冷たい空気が体の中をスッキリさせてくれる。

「大丈夫です。気持ちいいですね」

「そうか」

彼はそのまま歩き始めた。
私は彼の隣に並び、いつものように話を始めたが彼は考え事をしているのかなかなか会話が弾まない。今日は朝からなんとなくいつもと違う彼の様子を不思議に思っていた。
しばらくすると意を決したように話をし始めた。

「柴山……俺は君のことが好きだ。ずっと前から気になっていた。上司という立場からこういう話をしていいのか悩んでいたが言わずにはいられない」

「え?」

私は驚いてしまい立ち止まってしまった。
すると彼は私より数歩先に進んでしまい、振り返ってきた。

「俺とは考えられないというなら忘れてほしい」

振り向いた彼の顔は真剣で、少し緊張しているように見えた。
いつも見ているだけだった彼から告白されるなんて考えてもいなかった出来事。私は立ち止まったままこの今の状況を飲み込まずにいると、彼は頭をかきながら困ったような表情を浮かべた。

「ごめん。こんなこと言われても困るよな。忘れてくれ」 

彼は前を向き歩き始めてしまった。
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