御曹司の溺愛から逃げられません

強くなれない

4月。
瑛太さんは転勤になった。
彼から聞いていたが本当に辞令が出てしまった。
とはいえ本社なので同じ東京都内。いつでも会えると思っていた。
彼がうちの支店から去る時に何人もの女性社員に告白されていたのも知っている。彼は私に知られていないと思っているだろうが、女性のネットワークは広く、否応なしに私の耳にも入ってきた。

「竹中さんが告白したらしいわよ。でもダメだったみたい」

「え？　あの竹中さんが？」

「そう。彼女でさえ落ちなかったみたい」

竹中さんはうちの支店、ううん。我が社の中でも群を抜いて美人で優しくて人気ナンバーワンの女性。彼女自身色々な方からアプローチを受けていると聞いていたが、彼女がアプローチしたいのが瑛太さんだったなんて、と驚いた。
聞き耳を立てていると、竹中さんとは付き合えないとだけ言われて断られたみたいだ。
ほっと肩を撫で下ろすが、つっかえたものが取れない。
それからも幾度となく彼への告白を聞かされたがその度に私の胸はつかえたものが大きくなっていった。

苦しい。

けどなぜ苦しいのかわからない。瑛太さんはどの女性も断っているのに。

ため息が漏れるが、なぜため息が出るのかわからない。
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