御曹司の溺愛から逃げられません
翌朝私はいつも通り早めに出社し、ロッカーで着替えてから掃除を始めた。
以前なら瑛太さんとの少しの時間が楽しみだったのだが今はそれもない。けれどみんなが気持ち良く働けるのなら、と続けていた。

「おはよう」

段々と出勤してき始めいつものように活気が出てきた。
店舗のシャッターが開くと土曜日ということもあり、お客様が早くから来店し始めていた。
営業の補佐や電話対応、直接店舗に来店された方への対応などに追われ、お昼ご飯も満足な時間は取れずに慌ただしく1日が終わった。
最後に予約の方の契約に立ち会うと今日の仕事は終わった。

ロッカーで着替え始めると私の私服を見て声をかけてきた人がいた。米田(まいた)さんだ。彼女には以前にも私服を見て笑われたことがあった。

「あれ? 柴山さん珍しい格好ね。デート? でも柴山さんがピンクって……ちょっと」

クスクスと鼻で笑われ、私は青ざめていくのがわかった。彼女に他意はないのかもしれない。けれど私は心の奥で何かが刺さったように感じ、俯いてしまった。

「ま、どんな人か知らないけど仲良くやったらいいんじゃない? フフフ、ピンクねぇ」

さげずむような言葉に私の心は重くなり、ひとり残されたロッカーでふと目に涙が溢れてきた。
慌てて私はハンカチで目元を抑えるが止まらない。
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