御曹司の溺愛から逃げられません
「やっと会えたんだ。香澄を感じたいけど」

耳元で囁かれると膝から落ちそうになる。
どうしてこんな甘い言葉を言えるの?
私が戸惑っていると駅構内に入らず、横へと連れて行かれた。

「香澄は会いたくなかった?」

ますます甘い声で私の耳元で囁く。
会いたかったに決まってる。
私は彼の手をぎゅっと握りしめると彼は手を引き寄せ腕の中に入れてくれた。
誰かに見られるのでは、と心配になるが彼は私の顔が見えないようにさりげなく隠してくれた。
さっき米田さんに言われた言葉が引っかかっていて、私といる彼の評価が下がったらと思うと不安になっていた。こんな素敵な彼の隣に並ぶのが私でいいのかとロッカーで思い悩み、今日も会いたいけど会いたくない気持ちになっていた。
彼の腕の中にいると忘れさせてくれるが、それでも今日の服が気になって仕方ない。

「瑛太さん、うちでご飯食べませんか?」

「香澄の部屋?」

「はい。土曜日で混んでるし、何か買ってうちでゆっくりしませんか?」

何度となく来たことのある私の部屋。
狭いけど、彼に落ち着くねって言われほっとしたのを思い出した。私もあの狭い部屋でくっついて過ごすのが好きだから久しぶりにそうできたらと思った。

「嬉しいな。香澄の部屋は落ち着くから好きなんだ」

また彼に落ち着くと言ってもらえ、ほっとした。
ふたりで手を繋ぐとデパ地下で値下げになったデリを購入し私の部屋へ向かった。
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