御曹司の溺愛から逃げられません
部屋へ戻ると私はとにかく明るい部屋でこのピンクのブラウスをじっくり見られたくなくて、慌てて洗面所で部屋着に着替え、洗濯機に放り込んだ。

「お待たせしました」

私が出てくると、彼はお皿にデリを盛り付け直し、飲み物の準備までしてくれていた。
小さなソファに並んで座り、コーヒーテーブルにデリを並べるととても豪華な晩餐になった。

「お疲れ様」

彼からビールの入ったグラスを渡された。

「ありがとう」

グラスと小さく重ねると私はゴクっとひと口喉へ流し込んだ。

「はぁ、美味しい」

「あぁ。美味しいな」

21時を過ぎてしまい、彼にとってかなり遅い夕飯になってしまった。
せめて汁物だけでも、と思ったが彼に疲れているのだから作らなくていいよと言われてしまった。

「今度はちゃんと作りますね」

「仕事してるんだから無理しなくていい。仕事の日なのに誘って悪かったな」

彼は遅い時間になってしまったことを気にしているようだ。

「連絡が来て私は嬉しかったですよ。でもこんな時間まで待たせてしまったのが申し訳なくて」

「そんなのは気にしないでくれ。俺が香澄に会いたいだけなんだから」

横に並ぶ彼は私の腰に手を回し密着してきた。
背の高い彼に引き寄せられると私は彼の胸元に顔が近づく。
ふっと顔を上げると視線が重なり、お互い引き寄せられるようにキスをした。
久しぶりのキスは笑ってしまうような唐揚げの味だった。

「さ、食べてしまおうか」

私は頷くと手元にあったラザニアに手を伸ばした。
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