御曹司の溺愛から逃げられません
「このまま泊まってもいいか?」

彼は申し訳なさそうに尋ねてきた。
私が頷くと嬉しそうに表情を緩ませており、久しぶりに私も嬉しくなった。

「俺が片付けておくからお風呂に入っておいで」

「私がします!」

「いいんだ。仕事で疲れてるだろう? 休みの俺がするよ」

そう言うとささっと立ち上がり使った食器をキッチンへ運んでいった。手慣れた様子でゴミをまとめ始めたので私は彼の言葉に甘え、バスルームへ向かった。

「香澄? もう洗った?」

しばらくすると洗面所から彼の声が聞こえてきた。

「う、うん。あとは温まったら出ます」

ドアの外に声をかけるが返事がない。
するとバタンとドアが開き、裸の彼が入ってきた。

「ど、どうしたの?」

「うん。久しぶりだから一緒に入ろうかと思って」

私はドギマギしてしまった。
今まで事後で流されるように一緒に入ることはあったが、何もしていないのに入るなんてなかった。
彼はさっと洗い終わると狭いバスタブに入ってきた。
私の背中側に入ると膝の上に乗せられてしまった。

「どうした? なんか今日変だぞ?」

「え?」

「いつもの香澄らしくない。何かあった?」

私のどの態度でそう感じたのだろうか。
言い淀んでいると彼は私の肩を揉み始めた。

「凝っているな。香澄の体がカチカチで可哀想だ」

彼は優しく揉み始めた。
私はゆっくり振り返ると彼と目があった。
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