御曹司の溺愛から逃げられません
「さ、ひとまず片付けて社に戻りましょう。秘書室のみんなも早く紹介してほしくてうずうずしているのよ」

ふふふ、と優しく笑うと手早く紙袋に書類や名刺をしまい始めた。
私はドキドキしながら何とか手を動かした。

社長は瑛太さんで、彼は私を転勤させた張本人?
その上交際してるのも知られている?
公私共に支えてってどういう意味?
頭の中は急に起こった出来事でいっぱいになった。

社に戻ると改めて秘書室で集まり、室長から紹介された。
秘書室には男性3人、女性5人在籍しており産休に入った女性の代わりに呼ばれたようだ。

「皆さんご存知かと思いますが柴山香澄さんです。社長のサポートに私と立川さんと一緒に入られます」

「よろしくお願い致します」

皆さんの揃った声に圧倒され、私も慌てて「よろしくお願い致します」と頭を下げた。

各々が自己紹介してくれるが緊張のあまり頭に入ってこない。
メモ帳に慌てて書いていると周りから「大丈夫よ。そんなに慌てて覚えなくても」と優しく声がかけられた。

「ありがとうございます。精一杯頑張ります。よろしくお願い致します」

改めて頭を下げると、みんなも頭を下げて挨拶をしてくれた。
どうにか初日の業務を終え、今日は定時で上がっていいと室長から声がかけられた。

「柴山さんは社長付きになるので退勤前に必ず挨拶をしてから帰ってください」

「かしこまりました」
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