御曹司の溺愛から逃げられません
「おはようございます」

彼との気まずい空気が流れる中、室長が出勤してきて沈黙が破られた。

「おはようございます」

私が挨拶をすると、彼も「おはよう」とだけ挨拶をして社長室へと戻って行った。

「すみません。お邪魔してしまいましたか」

「まさか。その反対です。助かりました」

室長は驚いた表情を浮かべるが私は笑顔で返すと給湯室へ戻った。
彼の切なそうな顔を見て胸が苦しくなった。彼がただの瑛太さんだったらよかったのに、と気持ちの整理がつかず、手にしていた布巾をギュッと握りしめた。
西園寺コーポレーションという大きな会社を率いる社長だなんて私には雲の上の人。
私と釣り合いが取れるわけがない。
昨日立川さんにはああ言ってもらえたが、私には彼の隣に立つだけの美も知性もないのは自分が一番わかっている。引き下がらざるを得ない。
深呼吸をし、気持ちを落ち着けるとデスクに戻った。
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