御曹司の溺愛から逃げられません
「瑛太さんは社長なの。もう私の知ってるあなたはいない。これからどんどん華やかな世界で活躍していくあなたを影ながら応援してます。せっかく秘書課に呼んでいただいたけど、私には荷が重すぎます。配属転換をお願いします」

消え入るような小さな声で私はお願いをした。

「そんなことはさせない。俺は香澄と一緒にいたい。公私ともに支えて欲しいと思っている。結婚を前提に考えて欲しい」

「無理です」

私は即答した。
西園寺コーポレーションの社長である彼と私が釣り合うわけがない。課長の頃の瑛太さんとだって釣り合わないと思っていたのにもっとすごい人だったなんて。
何度も首を振り「ごめんなさい」と繰り返した。
彼のことが好きだけど、それだけでは超えられない壁があった。

「俺は香澄が好きだ。君以外とは考えられない。もう離してあげられない。いくら逃げても追いかける。早めに降参してくれると嬉しいが、俺はまた君に好いてもらえるよう頑張るよ」

「無理です。ごめんなさい」

「香澄は気にしなくていい。俺が勝手にすることだから」

頭を下げたままの私の頭にそっとキスをするとまたぎゅっと抱き締めてきた。

「ごめん。全力で香澄を追いかけさせて」

耳元で囁かれるバリトンボイスは身体に電流が流れるようにビリビリと刺激された。
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