御曹司の溺愛から逃げられません
扉を閉めたところで思わず、はぁ、とため息が漏れてしまった。

「どうしたの?」

ちょうど秘書課には立川さんしかおらず、私は社長に言われた件を報告した。

「同伴? 来週の創立記念パーティーかしら」

「はい。橘建設とおっしゃってました」

私はうなだれるよう頭をもたげ、また大きなため息が出てしまった。

「柴山さん! ため息はダメよ。創立記念パーティーなら大変なことはないわ。基本挨拶周りだけど、社長について歩けば問題ないし、何より女性除けという意味合いが強いはず。安易に秘書と言わなくていいわ」

「そんな! 周りから勘違いされてしまいます」

慌てて立川さんに言い返すがそれも秘書の仕事のうちよ、と言われてしまう。
仕事ならば、とは思うが距離を置いている今は彼の隣にいるだけで胸が苦しくなる。
そんな中、私にこの役が務まるのか不安になった。

「ほら、そんな顔しないで。準備は手伝うから」

立川さんに微笑まれ、なんだか違った不安が頭をよぎったがこの時にはうっかり話を流してしまった。
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