御曹司の溺愛から逃げられません
「柴山だってみんなと行かないのはなんでた?」

「私は……飲んでも真面目すぎて面白くないからじゃないですかね。お酒は好きなんですけど。でもたくさんの人数は苦手だし、自分からはなかなか誘えないからひとりが気楽になってしまって」

照れ隠しのように笑うが、話していて虚しくなる。

「俺だってそうだ。会社の付き合いは参加するが、個人的となると少し苦手なんだ。今日柴山に声をかけるのも正直悩んだ。こんなおじさんに誘われて嫌な顔をされたら、と思うとちょっとな」

「おじさんじゃないし、課長は素敵な人なんです!」

「そんなこともないが……。でも柴山にはそう思ってもらえてるのなら嬉しいよ。ありがとう」

課長はふっと私の頭に手を置いてきた。
その手の大きさに私の胸は高鳴った。

「明日はどこに行くんだ?」

「この前行った時に臨時休業だったモンブランのお店に行くつもりです。賞味期限15分って言う絶品なんですって。この前食べられなかったから余計に気持ちが強くなっているんです」

「へぇ。賞味期限15分? それはすごいな」

私は頭に浮かぶモンブランを思い出すだけでうっとりしてしまう。

「今の季節は和栗なんですって。楽しみだなぁ」

課長の前なのにとうとう敬語も無くなってしまった。

「俺も食べてみたいな」

「そうですね〜」

「いいのか?」

「え?」

私はぼうっとしており何の話なのか分からなかった。

「いやぁ、明日が楽しみになってきたな」

そう言うと手にあったビールをゴクッと飲み干していた。
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