御曹司の溺愛から逃げられません
「香澄、そろそろ疲れたか?」

あらかた挨拶したと思われる頃、壁際にあるテーブルに連れて行かれた。少しだが椅子が用意されており、立食でなくここで着席して歓談できるようになっていた。
私を座らせるとここで待つように声をかけ、さっと人の中へ消えていった。

ふぅ……。
手を繋がれたままで緊張しっぱなしだったが、ようやく一息ついた。
彼がどうしてこんな目立つ場所に私を同伴させたのだろう。
本当に私のことを変わらず想っていてくれてるの?
頭の中が整理できずにいると、お皿にフィンガーフードを何種類ものせて持ってきてくれた。近くにいたボーイに合図をするとドリンクを頼んでくれ、私の隣に座り込んだ。

「お疲れ様。お腹が空いただろう? 香澄の好きそうなものを選んできた」

確かに私の好きそうなものがのせられており、急にお腹が空いてきた。
手にしていたシャンパンを持ってきたボーイに新しいものと交換してもらうと2人でグラスを合わせた。
緊張でシャンパンが喉を通らなかったので、ようやく口の中で弾ける炭酸に喉がスッキリした。

「はぁ……」

「疲れただろう? ファンガーフードがいくつもあったからどうだろう。香澄はこれなんか好きじゃないか?」

マグロのカナッペのクラッカーを勧められ、口にすると程よい塩味が疲れをとってくれる。
チーズやポテト、きゅうり、ビーツ、トマトがスティックに刺されたピンチョスも見た目を楽しませてくれた上に味も美味しい。ハーブが効いているのだろう。
つい食べ歩きを趣味としている素の私が顔を出し、お皿の上に乗せられた料理に目を惹きつけられた。
観察しながらどんどん手を伸ばしていくと、隣からクスッと笑う声が聞こえてきた。
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