御曹司の溺愛から逃げられません
どのくらい抱きしめられていたのだろう。
周りのざわめきにハッとした。
ホールの片隅とはいえ、創立記念パーティーの会場だった。
瑛太さんも気を緩めていたのか今度は簡単に彼の腕から抜け出ることができた。

「パーティーの途中です! ごめんなさい」

バッグの中からハンカチを取り出し、目元を押さえると顔を上げた。

「大丈夫。ここは隅だから。それに俺が我慢できなかった。こんなに綺麗な香澄を見てしまったら、秘書としてただ隣を歩くなんて出来ない。俺のものだと宣言したくなったんだ」

「そんな……」

地味で目立たないようにそっと過ごしてきた。誰かの目に留まることなんてなかった。
だからそんな心配する必要なんてないはずなのに、彼の目には私がどんなふうに映っているの?
彼の顔をじっと見つめてしまうと彼も見つめ返してきた。

「俺は香澄にくびったけだよ」

真顔で言われ、私は俯くしか出来なかった。
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