目の前の幸せから逃げないで

平静を装い 寝室を出る私。

光毅は 静かに 私の後を 付いてきた。


「お粥だけど、我慢してね。」

ダイニングに 光毅を座らせて 私は お粥を 差し出す。


コンソメで 味付けした ミルク粥。

光毅は 一口食べると

「美味しい。」

と言って 笑顔を見せる。

私は 光毅と向かい合って コーヒーを飲む。


「由紀乃さん、料理 できるんだ。」

「できるわよ。一人暮らしが 長いもの。」

「いつも お昼は コンビニだから…」

「自分のために 料理は しないわ。面倒だし。」

「ありがとう…」

「えっ?」


「だって、俺の為に 料理して くれたんでしょう?」

「フフッ。そうね。」

「由紀乃さんは 食べないの?」

「私、朝は 食べないの。いつも。」

「へぇ。」


「ねぇ、気分は どう?」

「うん。すっかり 良くなりました。おかげ様で。」

「そう。良かったわ。」


お粥を 食べ終えた 光毅に 念のため 薬を飲ませ

「もう少し、横になった方が いいわ。ぶり返すと いけないから。」

「あの…シャワー 貸してもらえますか?すごく 汗かいたから。」

「いいわよ。こっち。」

私は、昨夜 光毅が 脱いだ服と バスタオルを渡した。

「これ、洗ってくれたの?」

「うん。」

「ありがとう。」

光毅は 狭い洗面所で、急に 私を 抱き締めた。


「こら、早くしないと 冷えるわ。」

光毅の腕を 逃れて、私は 洗面所を出た。









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