目の前の幸せから逃げないで
光毅の行為は 未熟で。
技巧も 駆け引きも なかったけど。
私は 胸が熱くなって 光毅を 愛おしく 思ってしまった。
「由紀乃さん…好き。」
果てた後の 光毅は 脱力して さらに幼くて。
私の胸に 顔を寄せて 小さく呟く 光毅。
私は 優しく 光毅の髪を 撫でてしまう。
「眠らないの…?」
「由紀乃さんは…?」
「そうね。私も 寝ようかな。」
「うん。一緒に 寝よう。」
そっと 目を閉じていたら、私は 眠ってしまった。
昨夜は ソファで 寝たから。
よく眠れた つもりだったけど。
やっぱり 熟睡できなかったのか。
昨夜、熱で 苦しんだ光毅は 裸で 私に くっ付いている。
『寒くないかな?』
ギュッと 光毅を 抱き寄せてしまう私は
もう 光毅に 捉われていた。
「んん…由紀乃さん…」
薄目を開けた光毅。
「喉 乾かない?」
「大丈夫。」
「少し、眠れた?」
「うん。由紀乃さんは?」
「私も。起きてもいい?」
「駄目。一緒にいて。」
「どうしたの…?」
「一緒にいたいから…」
こんな風に 求められたら
離れることなんて できない。
清原さんは 私が どんなに求めても 帰ってしまう人だった。
でも光毅は 私を 強く求めてくれるから。
私は もう 光毅を 愛し始めていた。