目の前の幸せから逃げないで
10

「いらっしゃい。どうぞ、上がって。」 

紗良ちゃんを 抱いた鈴香が ドアを 開けてくれる。

「わぁ。紗良ちゃん。大きくなったね。」

鈴香に抱かれた 紗良ちゃんは 

私に 笑顔を向けてくれた。


しばらく 近況報告を しているうちに

紗良ちゃんは お昼寝の時間になって。

紗良ちゃんを 寝かしつけた鈴香が 戻ってくる。


「どうしたの。わざわざ ここまで 来るなんて。何か あったの、由紀乃?」

熱いお茶を 淹れ直した 鈴香は

私と向かい合うと 単刀直入に 聞いてきた。


「うん…実はね、鈴香。私 今 ハタ君と 付き合っているの。」

私も もう 何の前置きも しないで 言った。


「……っつ。嘘でしょう…」

想像以上に 驚いた鈴香は 一瞬 絶句する。

「嘘じゃないの。」

私は 俯きながら 小さく答えた。








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