目の前の幸せから逃げないで
2

面接の翌朝 光毅は 約束の時間より 少し早めに 出勤して来た。

「おはようございます。」


事務所の入り口で モタモタしている光毅に 鈴香が 声をかける。

「あっ、今日から バイト?こっち、入って。」


「ハタ君、紹介するわ。仕事を 引き継いでもらう 青木さん。鈴香、ハタ君よ。」

私は、光毅と鈴香を 引き合わせた。


「はじめまして。葉田です。よろしくお願いします。」

光毅は 神妙な顔で、鈴香に 挨拶をする。

「こちらこそ、よろしく。ハタ君の席は こっちよ。」

鈴香は 自分の隣の机に 光毅を呼ぶ。

「ハタ君は、このパソコンを 使ってね。必要なファイルは 入れてあるから。」


すぐに 仕事を始める 鈴香。

光毅は 真剣な表情で 鈴香の話しを 聞いていた。

二人の様子を 見ながら

私も 自分の パソコンに向かって 仕事を始める。


午前中は 私も忙しい。

昨日の注文状況、発送の確認。

お問い合わせや メールの返信。

仕入れた商品の 到着状況。

セール品の選別など…


やり始めたら キリがない。


最初は 鈴香達の

『あの、これは…』とか

『そうそう、それでいいの』

という声が 耳に入っていたけど。


自分の仕事に 集中するうちに

鈴香と光毅のことは 忘れてしまった。





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