スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
「うん、了解」

 一瞬慶汰のことが頭を過ったが、同期会となれば参加しても問題ないだろう。
 大樹と軽く雑談を交わし、会議室をあとにした。



 その夜。当たり前のように慶汰の家に帰り、ベッドの上で寛いでいると、お風呂上がりの慶汰が布団に潜り込んできた。

「有紗、もう寝る?」
「うん、明日朝一で資料上げなきゃいけないから、少し早く起きようと思って」
「じゃあ俺も寝ようかな」

 言いながら、慶汰が有紗を抱きしめ頬やこめかみに口づけを落としていく。彼にとっての「寝る」は、当然セックスをしてから寝るという意味なのだ。

 有紗もその時間も加味してベッドに入っているため、今更拒む気はない。慶汰に身を任せていると、彼は耳元でぽそりと呟いた。

「そういえば、羽鳥さんと同期なんだって?」
「えっ? そうだけど……」

 突然出てきた大樹の名前に、有紗の声が裏返る。

(一応付き合ってたこと話したほうがいいのかな……? でも、わざわざ言って変に誤解されたくもないし……)

 話すべきか否か迷っていると、不意に近づいてきた慶汰が耳朶をぱくりと口に含んだ。

「ひっ……」
「どうしたの、黙って。もしかして何かワケアリ?」
「なんでも、っ、ない……」

 人一倍洞察力に優れている慶汰のことだから、もしかすると気付いているかもしれない。けれど有紗は、敢えて口にはしなかった。

(どうせ、元彼だって知られても慶汰さんは何とも思わないだろうし……)

 それは慶汰が大人だからなのか、自分に自信があるからなのかはわからない。しかしながら、嫉妬しないことだけは目に見えていた。

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