スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
 有紗自身もべつに嫉妬されたいわけじゃない。それでも明らかに余裕な態度を見せられると、自分に慶汰を魅了するだけの力がないのではないかと、思ってしまうのだ。

 だから自己防衛も兼ねて、自ら余計なことは口にしない。
 その後は大樹の話に戻ることなく、恋人との甘やかな時間を過ごした。



 翌日。社員食堂にて、有紗とゆかりは昼休憩を共にしていた。

「まさか羽鳥くんが戻ってきてるなんて。同期会やるんだよね」
「そう~。私も仕事調整するから、ゆかりも参加してね」
「もちろん! 同期で集まるの久しぶりだね~。そんなに人数も残ってないけど」

 六年目ともなれば、入社当時関わりがあった同期も、転勤になったり転職したりしている。ずっと本社勤務で一緒の有紗とゆかりのほうがレアなケースなのだ。

「でも、羽鳥くんなかなか良い男になってたよね? 人事の子たちも騒いでたよ」
「へえ……まあ、たしかに仕事できる男って感じ」
「えー有紗が褒めるなんて珍しい!」
「そんなことないよ。思ったことを言っただけ。向こうにいるときから噂は聞いてたしね」

 大樹は帰国早々、有能なクリエイティブが帰国したと社内で注目の的となっていた。その上イケメンなのだから、騒がれないほうがおかしいだろう。

「さすが有紗の彼氏は、スペック高い人ばっかりだね~羨ましい」
「ねえ、声大きいって――」
「なになに、何の話?」
「わっ!」

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