スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
これ以上質問をしても「何もないよ」とかわされてしまいそうだったので、ぐっと言葉を飲み込んで、豪勢な朝食に隠れて舌鼓を打った。
◇
金曜日の昼下がり。遅めの昼休憩に入った有紗は、社食のテーブルで頭を抱えていた。
その理由のひとつは、目の前にある彩りの良い弁当。箸もつけずに難しい顔をしている有紗を見つけ、ゆかりが近づいてきた。
「わ、どうしたのそのお弁当! 美味しそう! 有紗作ったの?」
「……違うよ。私こんなの作れないし」
「えっ、まさか……」
「そう。作ってもらったの」
先日、慶汰が奇跡の朝ごはんを用意してくれてからというもの、毎朝彼が先に起きて豪華な朝食を作ってくれている。さらには料理以外の家事も有紗が手を付ける前にこなし、時間が余ったからと弁当まで持たせてくれるようになった。
ちなみに仕事に関しては慶汰のほうが忙しそうで、一体いつ家事をしているのかも不明。有紗としては家事代行でも雇っているのかと疑っていた。それほどまでに、慶汰の変わりようは著しく、まるで別人格が出てきたと言っても過言ではない。
「なーんだ、前に有紗から抜けてるって聞いてたのに、やっぱり完璧なんじゃん」
「いや、本当に抜けてて――」
「だって料理苦手って言ってなかった?」
「苦手っていうか、まあそうなんだけど……」
この気持ちをどう伝えたらわかってくれるのだろうかと、有紗は考えを巡らせた。だけど、説明のしようがなくて小さくため息をついた。
「はぁ、羨ましい~有能な彼氏」
「……そうでもないよ」
「え?」
「お、お疲れ」
◇
金曜日の昼下がり。遅めの昼休憩に入った有紗は、社食のテーブルで頭を抱えていた。
その理由のひとつは、目の前にある彩りの良い弁当。箸もつけずに難しい顔をしている有紗を見つけ、ゆかりが近づいてきた。
「わ、どうしたのそのお弁当! 美味しそう! 有紗作ったの?」
「……違うよ。私こんなの作れないし」
「えっ、まさか……」
「そう。作ってもらったの」
先日、慶汰が奇跡の朝ごはんを用意してくれてからというもの、毎朝彼が先に起きて豪華な朝食を作ってくれている。さらには料理以外の家事も有紗が手を付ける前にこなし、時間が余ったからと弁当まで持たせてくれるようになった。
ちなみに仕事に関しては慶汰のほうが忙しそうで、一体いつ家事をしているのかも不明。有紗としては家事代行でも雇っているのかと疑っていた。それほどまでに、慶汰の変わりようは著しく、まるで別人格が出てきたと言っても過言ではない。
「なーんだ、前に有紗から抜けてるって聞いてたのに、やっぱり完璧なんじゃん」
「いや、本当に抜けてて――」
「だって料理苦手って言ってなかった?」
「苦手っていうか、まあそうなんだけど……」
この気持ちをどう伝えたらわかってくれるのだろうかと、有紗は考えを巡らせた。だけど、説明のしようがなくて小さくため息をついた。
「はぁ、羨ましい~有能な彼氏」
「……そうでもないよ」
「え?」
「お、お疲れ」