スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
「え? ああ、まあな。大丈夫、またすぐ集まれるって。とりあえず今日は飲もう。俺何時まででも付き合うし」

 ここにいるメンバーは酒好きで気が合い、大樹が海外赴任する前はよく飲んでいた。懐かしくて楽しい気分でビールを煽る有紗を、ゆかりは心配そうに見つめる。

「有紗は飲み過ぎ注意だよ。あまり遅くなったら彼氏さん心配するんじゃない?」
「帰りが遅くなったくらいでとやかく言う人じゃないよ」
「え、なに同棲してんの?」
「うーん、半同棲って感じ」

 今日同期飲みがあることは、慶汰にも伝えてある。彼もまた地元の友人と飲むとやらで、楽しんでおいでと言われていた。

 相変わらず余裕な対応に、有紗は再びモヤッとした。憂さを晴らすかのようにビールを流し込んでいると、大樹が有紗の顔を覗き込む。

「なあ……彼氏ってもしかしてマネージャーの鶴生さん?」
「ぶっ! はっ……なに……」
「やっぱり」

 有紗が否定をする前に、大樹は納得したように頷く。聞けば、たまたま社食で食べていた弁当が同じだったことを時間差で見られていたらしい。

「あの、このことは――」
「あー言わない言わない。けど、マジか~あの人と付き合ってんのか」

 慶汰は中途入社ではあるが、前職での経歴や入社後の活躍によって他部署でも話題に上がっている。最近は社長賞まで獲ってしまい、大樹の目にも留まっていたのだ。

「有紗が上司と付き合ってんのなんか意外。付き合って長いの?」
「そう? 半年くらいだよ」
「へえ、ちなみにどっちから?」
「向こうからだけど……」

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