スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
 元々チームリーダーである有紗は慶汰との接点が多かった。残業後に飲みに誘われたことをきっかけに、慶汰からの誘いが増えて告白されたのだ。

 仕事を頑張りたい有紗にとって上司との恋愛は躊躇われたが、慶汰からの猛アタックの末、半ば強引に付き合うことになった。そもそもあそこまでイケメンで優秀な男性にアピールをされて、落ちない女性はいないだろう。

「さすがに鶴生さんが相手じゃ誰も勝てないよな~。すごい人捕まえたな」
「……本当にね、たまに嫌になっちゃうくらい」
「え? なんだよ、その不穏な感じ」
「あ、いや……」

 周りに関係を秘密にしていることもあり、慶汰の話を他人にすることはない。飲み始めたお酒と、気心知れた同期に囲まれたせいで、有紗は我慢していた気持ちが溢れてしまった。
 
「話くらいなら聞くけど。俺が元彼だとか思ってんなら気にするなよ?」
「そんな――」
「そうそう! 有紗は弱音吐けないタチなんだから、こういう時に言わないと」

 二人に諭されて、有紗はしばし考え込む。ここ最近の悶々とした気持ちは消えるどころか募る一方で、覚悟を決めて口を開いた。



「――なるほど~。そういう悩みもあるのね」

 慶汰に対する有紗の劣等感。人によっては贅沢な悩みにも聞こえるが、ゆかりと大樹は揶揄することもなく話を聞いてくれた。

「だからって有紗が引け目に感じることはないんじゃない? 鶴生さんが完璧なのは今に始まったことじゃないし、有紗のこと下に見てる感じでもないんだしさ」
「うーん……」
「でも急に変わったのは気になるね。男の人が急に甲斐甲斐しくなるのって――」
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