スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
melancholy side K

 スマートフォンを傍らに置いたまま、慶汰はバーのカウンターで手元のグラスを煽る。そうしているうちに、日付を跨いでいることに気が付いた。

(連絡はまだなし……か)

 仕事の連絡は早くとも、プライベートがおざなりになってしまう人はわりといるが、有紗の几帳面さは見事なものだ。仕事以外の時間であればすぐにレスポンスがある。それもあって、この時間まで有紗から連絡のひとつもないことに、慶汰は居ても立っても居られない気持ちでいた。

(電話してみるか……いや、お楽しみのところに水差すのもなぁ。けど、元彼もいるらしいし……)

 慶汰が会社を出る際、有紗は殺気立って仕事をしていたが、おそらく無事同期会には行けたのだろう。返信がないのは盛り上がっているからだと考えるのが自然だ。

 以前有紗に「同期は大切にしたほうがいい」と伝えた言葉は嘘ではないし、その通りにしてほしいとは思っている。しかし、余裕のある自分を見せるための言葉であることも間違いではなかった。

「慶汰スマホ気にしすぎ。まだ彼女から連絡ねーの?」

 軽い口調で話しかけられ、慶汰は我に返った。今は友人と飲んでいるのだ、と。普段なら遅くならないうちに切り上げるが、今日は有紗から連絡がなかったこともあり、ついだらだらと飲み過ぎてしまった。
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