スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜
「それより悪かった。さっき話しかけて。でも彼なら言いふらすタイプじゃないか。あの様子だと俺たちのこと知ってる?」
「うん……」
「なら問題ないか」

 一瞬怒っているようにも見えたが、慶汰の雰囲気はすぐに余裕のあるものに変わる。それがどこか悔しくて、有紗は聞かれてもいないのに先ほどの出来事を口走っていた。

「実は送ってくれるって言われて一度断ったんだけど、話があるっていうから……」
「告白でもされた?」
「っ……」

 慶汰は決して先ほどの話を聞いていたわけではない。ただ、帰り道に二人を見かけただけ。それでも二人の雰囲気から、何があったのかは粗方悟っていた。

「図星か。本当有紗はわかりやすいな」
「なに、それ……」

(まただ。いつだって慶汰さんにはお見通しで……いつだって私の一枚も二枚も上手でーー)

「……悔しい」

 つい、本音が溢れ落ちた。

「慶汰さんといると、惨めになる」
「有紗……?」
「仕事だって尊敬しちゃうくらいできるし、容姿だってムカつくくらいかっこいいし、なのに気が利くし何でもスマートにこなして。いつも余裕で……」

 お酒のせいもあって、饒舌になった口は止まることなく気持ちを吐露していく。

「だから朝起きれないとか、家事が苦手なところは可愛いなって……私が唯一勝てるところだと思ってたのに。そんなところまで完璧だなんて、聞いてないよ。慶汰さんといると不安になる。何で私と付き合ってるんだろうって」

 有紗がここまで素直になるのは初めてだった。慶汰にとっても予想外で、すぐに切り返せずにいる。

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