スパダリの秘密〜私の恋人はどこか抜けている〜

　ちなみに有紗の家賃が勿体ないので、次の更新のタイミングで完全に引っ越してきてほしいと言われている。慶汰のマンションは会社からほど近い上に、二人で暮らすには十分な広さの１LDKで二人入居も可。有紗としても自宅以上に快適な生活を送っており、断る理由はなかった。

（それに……慶汰さんには私がいなきゃダメだから）

　有紗は今まで、無意識に自分よりも何かが劣った男性とばかり付き合ってきた。それは自分自身の自尊心を保つためでもある。

　だから半年前、上司である慶汰に告白された際は非常に戸惑った。こんな非の打ち所がない男性の隣にいたら、自分が惨めになりそうだ、と。

　結局一緒に仕事をしていく中で慶汰に惹かれていたこともあり、猛アタックの末に折れてしまったのだけれど。

　しかしながら、付き合ってみたら慶汰は仕事以外では抜けている部分が多く、有紗のカバーがあってこそパフォーマンスを発揮できているという。そのことに有紗は恋人としての意義を感じており、慶汰を支えていることが嬉しかったりもするのだ。

（よし、私も準備しなきゃ）

　軽く頬を叩いて気持ちを切り替えると、顔を洗いに向かった。