キラリの恋は晴れのち晴れ!

第1話 居候

キラリ「なぁ、とりあえず名前教えてくれよ…ウチの親に事情説明するにもある程度あんたのことを知っておかないと…」

翼「俺は翼、大学生さ。家を飛び出してとりあえずカード持ってるから生活には困らないと思ったら、親父のやつがカード止めやがってよぉ…お前のお陰で命拾いしたぜ!」

キラリ「カード!?お前…カードで飯喰ってんのか!?」

翼「カードで飯喰ってる!?それどういう意味だよ…」

キラリ「ト…トランプ…とかか?」

翼「はっ!?トランプ!?何言ってんだお前…現金の代わりにカードで銀行から引き落としてもらう方のカードだよ…」


キラリ「そっ…そうだよな…そうだと思ったよ…そ…それに…だっ…大学生!?てっきりホストとかで働いてんのかと思った…」

翼「何でそう思うんだよ?」

キラリ「い…いや…その…」

めちゃくちゃケメンで、背も高いし…こういうやつがホストとかやるのかなって…

翼「お前は?お前の名前教えてくれよ?」

キラリ「わ…私はキラリ…誰もが羨(うらや)む美少女女子高生!」

翼「美少女…へぇ…」

翼はわざと きらりに軽蔑の眼差しを向ける。

キラリ「なっ…何だよその反応…み…みんな私のことを美少女って言ってくれるけど…」

翼「それはきっとお前のことが怖くて気を遣ってるだけじゃねぇの?」

キラリ「はぁ!?お前けっこうズバズバものを言ってくる奴だなぁ!しっ…失礼だぞ!乙女心が傷つくだろ!」

翼「だって…美少女…?ふーん…乙女…へぇ…」

翼はからかってはいるが、実際のところ、キラリはなかなかの美少女と言って過言ではない。喋らなければ普通にモテるレベルなのだが…

キラリ「お…お前こそあれだろ!あの…ムダに背が高くてムダに顔が整っていて…それでそれで…ムダにスタイルとか良くて…お前こそ最悪だろ!」

翼「は?お前…それさっきから誉め言葉ばっかりにしか聞こえねぇけど?」

キラリ「いや…だから…まだあるぞ!そうだ!お前はムダに性格が悪い!そう!どうだこれ!これは悪口だろ?」

翼「俺のどこが性格悪いって言うんだよ!」

キラリ「そ…それはだなぁ…」

翼「もうわかったわかった…つまりお前からしたら容姿端麗で素敵だよ!って遠回しに言いたいんだろ?もうわかったから早くお前ん家行くぞ!もう腹へって仕方ねぇよ…」

キラリ「ちょっ…ちょっと待て!そんなことは言って無いし!まだ言いたいことは山ほど…」

翼はキラリを無視して歩きだした。

キラリ「ちょっと待てって!」

翼「何だよ?まだ誉め足りないのか?」

キラリ「ちっ…違う…家はこっちだ!」

キラリは翼の進んでいく反対方向を指差した。

二人は駅の方へと歩きだした。

キラリ「一つ言っておくぞ!ウチの母ちゃんはめちゃくちゃ怖いからな!ちゃんと挨拶とか言葉遣いとか気を付けないとブッ飛ばされるぞ!」

翼「ふーん…お前の母さんが?お前がそんなんなのに?」

キラリ「家では私だって…ちゃんとしてんだよ…父ちゃんはわりと優しいけど…あっ!でも、父ちゃんはかなりヤバイレベルで頭悪いから気を付けろよ!」

翼「おっ…お前に言われる親っていったいどんなハイレベルなんだよ!?」

キラリ「はぁ!?それどういう意味だよ!お前に私の何がわかるんだよ!?勉強はまぁ…いつも◯貰ってるけど…」

翼「マル!?マル貰って何が悪いんだよ!?」

キラリ「それはつまり…一番上に◯貰ってるから…」

翼「それってもしかして…テストがいつも0点ってことか!?お前…」

翼は口をあんぐりと開けて手を当てて驚いている。

翼「お…お前…よくそれで高校生やってられるな…」

キラリ「世の中上手く渡らなきゃ!」

翼「世の中上手く!?」

キラリ「そんなことより、電車で帰るんだけど…電車賃ある?」

翼「だから俺は一円も持ってねぇよ!とりあえず電車賃出しといてくれよ!」

キラリ「えぇ!?私定期だし…現金とか持たされて無いから…」

翼「どうしてだよ?」

キラリ「誰かにお金無いから貸してって言われたら…すぐに渡しちゃって返って来ないから…」

翼「別に取り立てに行きゃ良いだけだろうが?」

キラリ「だって…いつも知らない人から言われるからさぁ…返してって言いにいけない…」

翼はどういうことなのかイマイチ理解出来なかった。

翼「何でそんなに知らない人から金貸せって言われんだよ?」

キラリ「うーん…わかんないけど、母ちゃんが言うにはカモられてんじゃないの?って…ねぇ…翼…私カモられてんのかなぁ?」

翼「そ…そりゃ普通はそんなに知らない人から金貸せって言われることは無いからなぁ…当然カモられてるとしか考えられねぇよな…」

キラリ「そっかぁ…じゃ…じゃあ翼?カモられるってなぁに?」

そっからかぁ…コイツはちょっとキツいなぁ~…

翼は居候する場所を間違えたと後悔していた。

結局電車には乗れないので二人はタクシーでキラリの家に到着した。キラリはタクシー代金を母親に払って貰う為にインターホンで呼んだ。

キラリ「母ちゃん?ちょっと来て!」

少ししてから玄関のドアが開いて母親、薫(かおり)が顔を出した。

薫「あら、キラリお帰り!どしたの!?」

キラリ「電車に乗れないからタクシーで帰って来た。だからお金払って?」

薫「電車に乗れないって…まさかあんた…電車の乗り方も忘れたの?」

キラリ「んなワケ…ちょっと訳ありなんだ。とりあえずタクシー代お願いしまーす」

薫は訳がわからずタクシーの運転手にお金を払って戻ってきた。

薫「で?そこの俳優さんみたいなイケメンは誰?」

キラリ「あっ…ちょっとそこで知り合った人で…帰る場所が無いからしばらく家で…」

薫「ま、とにかくここでは何だから上がって」

そう言って三人は家のリビングに入っていった。リビングテーブルの椅子に腰をかけて

翼「キラリの母さんウィーッス!」

キラリは翼の挨拶に背筋が凍った。

バッ…バカ!あれほど言葉に気を付けろって言ったのに!

ところが薫は意外な反応を示す。

薫「ウィーッス!」

え!?えぇ!?どゆこと!?何で母ちゃんいきなりダチになってんの?

翼「今日からここの家にお世話になります翼です!よろしく!」
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