あなたに嫌われたいんです
「そういう理人さんは、どういう女性が好みだっていうんですか?」
そう尋ねてみると、彼は非常に嬉しそうに笑った。眩しいほどの笑顔だ。
「京香さんに聞かれるとは思ってなかったですね。そうですね、やはり芯の強い女性がいいと思います、責任感が強く、物事をしっかり考えているような」
(どう考えても今の私には当てはまっていないのだが)
「人のことを思いやれる、そんな人がいいですね」
(だから全然当てはまっていないのだが!?)
「では京香さんは、他にどんなことを求めますか? とにかく大事にして甘やかしてほしい、というのは分かりました。ほかにはどうですか」
今度は質問を返される。私は口ごもった。一体何を答えれば彼の機嫌を損ねられるか。
この数秒で色々答えが巡る。やっぱり顔ですね、お金は大事、高身長、高学歴も当然必要です!一般的に高望みと言われる条件を出してみたが、残念なことに目の前の男はそのすべてをクリアしてしまっているのだ。今更ながら、八神理人のスペックの高さにひれ伏したい。
「わ、私、は……」
「はい」
「か」
「か?」
「か……か……お、いや、おか、いや……
か、体の相性とか!」
裏返った声が出た。目の前の理人さんはさすがに目を見開いたまま停止した。私と言えば、恥ずかしすぎる発言に死んでしまいたくなっていたが、構うもんか。
私はここぞとばかりに早口で告げた。
「私、いろ、いろんな男性とお付き合いしてきて、いや付き合ってない男の人でもいいんですけど? その方面は奔放に行きたいタイプなんですよね、やっぱり大事じゃないですか。うんうん、お上手な方じゃないとちょっとねえ!」
自分の馬鹿みたいな声が広いリビングに響いた。実際のところ、そんなに大した経験もない女が、一体何を豪語しているのだろう。もうお嫁にいけない。あ、いけなくていいんだった。
でも、思えばこっち方面は攻めていなかった。性に奔放で、さらにそれを自慢するような女はどうなのだ。普通結婚相手には言わないだろう。引け、引け、頼むから引いてくれ。
心の中で手を合わせて拝む。表情は平然を保ちながら、じっと理人さんの様子を観察した。
彼は無言のままだ。ついにやったのか、と喜ぶ。と同時に、心のどこかが暗く染まるのはなぜなのだろうか。
「なるほど、よくわかりました」
「え?」
「京香さんの言っていること、よくわかりました」
そういった理人さんは、突然私の手首を掴んだ。熱い体温が伝わり、驚きで固まる。初めて触れた彼の手は、思っていた以上にずっと大きくて力が強い。
唖然とする私の顔を覗き込み、彼は言った。
「じゃあ、試してみましょう」
「……へ」
「付き合っていない相手でも大丈夫なら、僕も大丈夫ですよね。試してみないと、なんとも言えないのでは?」
そう言う彼の目は真剣だった。楽しんでるとか、からかってるとかそんな様子は一切ない。むしろ、何か怒っているのではないのかと感じるほど、まっすぐな目だった。
そう尋ねてみると、彼は非常に嬉しそうに笑った。眩しいほどの笑顔だ。
「京香さんに聞かれるとは思ってなかったですね。そうですね、やはり芯の強い女性がいいと思います、責任感が強く、物事をしっかり考えているような」
(どう考えても今の私には当てはまっていないのだが)
「人のことを思いやれる、そんな人がいいですね」
(だから全然当てはまっていないのだが!?)
「では京香さんは、他にどんなことを求めますか? とにかく大事にして甘やかしてほしい、というのは分かりました。ほかにはどうですか」
今度は質問を返される。私は口ごもった。一体何を答えれば彼の機嫌を損ねられるか。
この数秒で色々答えが巡る。やっぱり顔ですね、お金は大事、高身長、高学歴も当然必要です!一般的に高望みと言われる条件を出してみたが、残念なことに目の前の男はそのすべてをクリアしてしまっているのだ。今更ながら、八神理人のスペックの高さにひれ伏したい。
「わ、私、は……」
「はい」
「か」
「か?」
「か……か……お、いや、おか、いや……
か、体の相性とか!」
裏返った声が出た。目の前の理人さんはさすがに目を見開いたまま停止した。私と言えば、恥ずかしすぎる発言に死んでしまいたくなっていたが、構うもんか。
私はここぞとばかりに早口で告げた。
「私、いろ、いろんな男性とお付き合いしてきて、いや付き合ってない男の人でもいいんですけど? その方面は奔放に行きたいタイプなんですよね、やっぱり大事じゃないですか。うんうん、お上手な方じゃないとちょっとねえ!」
自分の馬鹿みたいな声が広いリビングに響いた。実際のところ、そんなに大した経験もない女が、一体何を豪語しているのだろう。もうお嫁にいけない。あ、いけなくていいんだった。
でも、思えばこっち方面は攻めていなかった。性に奔放で、さらにそれを自慢するような女はどうなのだ。普通結婚相手には言わないだろう。引け、引け、頼むから引いてくれ。
心の中で手を合わせて拝む。表情は平然を保ちながら、じっと理人さんの様子を観察した。
彼は無言のままだ。ついにやったのか、と喜ぶ。と同時に、心のどこかが暗く染まるのはなぜなのだろうか。
「なるほど、よくわかりました」
「え?」
「京香さんの言っていること、よくわかりました」
そういった理人さんは、突然私の手首を掴んだ。熱い体温が伝わり、驚きで固まる。初めて触れた彼の手は、思っていた以上にずっと大きくて力が強い。
唖然とする私の顔を覗き込み、彼は言った。
「じゃあ、試してみましょう」
「……へ」
「付き合っていない相手でも大丈夫なら、僕も大丈夫ですよね。試してみないと、なんとも言えないのでは?」
そう言う彼の目は真剣だった。楽しんでるとか、からかってるとかそんな様子は一切ない。むしろ、何か怒っているのではないのかと感じるほど、まっすぐな目だった。