気付けよ
豊かな自然をバックに写真撮影の流れになると、「撮ってくれ」と俺は直紀にスマホを預け、樹音を後ろから抱きしめて頬を擦り寄せた。
「照れんなよ。バレるだろーが」と耳元で囁くと、樹音は大人しく俺に体を預けてきた。
俺の心臓のバクバクが樹音の背中に伝わってしまいそうだ。

一通りの動物と触れ合った後は、売店で食べ物を買って、四人で広場の芝生に腰を下ろした。

しばらくすると、直紀と華鈴のじゃれ合いが始まった。他所でやってくれ、と思ったが、正直羨ましかった。
俺もスイッチが入ってしまい、「膝枕して」と樹音に要求する。そして返事も待たず、樹音の膝に片耳を付けて目を閉じた。

チラッと様子を伺うと、樹音は何か言いたげな目を向けてきた。まるで「競うな」と言っているようだった。

風が心地よくてうとうとしていると、髪に触れられる感覚に気付いて俺は目を開けたが、どうしたらいいのかわからず、静かに目を閉じた。
すると樹音が俺の髪を撫で始めた。うさぎを撫でるような優しい力加減で。
これは「彼女のフリ」だろうか。

それからパーク内を散歩した後、再びうさぎのふれあいコーナーを訪れた俺と樹音は、先程の″樹音似″のうさぎを探し当てると、閉園時間ギリギリまで愛でた。

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