俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
「翔さんも座って、何かパフェでも食べる?暑かったでしょ。」
キッチンカーにはエアコンが無いから、
ドアを開けていても意外と暑くなってしまう。

「確かに熱がこもるな。
夏前にエアコン付けよう。
果穂はいつもこの暑さに耐えてたんだな。」

「この車作る時に、エアコンは結構高いから辞めたの。毎年なんとか乗り切ってたし、
大丈夫だよ。」

「俺がプレゼントするから大人しく受け取って。このままじゃ、夏の営業は許可出来ない。」

椅子に座わりながらそう翔さんが言う。

足が長いからやっぱり窮屈そうだ。

帽子を取ってパタパタ扇ぐので、額の汗をタオルで拭いてあげる。

「ちょうど果穂の目線ぐらいなんだな。
顔が近くて嬉しい。」
そう言って翔さんが爽やかに笑う。

「あの、pertica cafe の社長さんですか?」
不意に外から話しかけられる。

「いえ、よく間違われる方いるんですけど、違いますよ。」

「そうなんですか⁉︎
本当にそっくり、お兄さんもイケメンですね。」
キャピキャピ女子2人に話しかけられている。

「ご注文は?みかんパフェとかりんごパフェいろいろ種類ありますけど、どれもお勧めですよ。」
そう言って、キャップを被り直し立ち上がる。

「えっとじゃあ、みかんパフェとりんごパフェ2つ下さい。」

「あ、はい。ありがとうございます。」
上手にかわすなぁと感心してしまった。

「お兄さん、彼女いなかったら私立候補します。」

翔さんは、お客様からナンパされてしまう。

私と言えば、オロオロ事の流れを見守るばかりで何も言えない。

「彼女いるんだ、隣に。彼女って言うか婚約者だから、今日は手伝いに来てるんです。
このお店普段もここでよく出してますので良かったらまた来てください。」

そう堂々と言って、ちゃっかり名刺代わりのインスタのコードが印刷されたビラを渡す。

「あっ…そうなんですね…。
すいません、お2人とてもお似合いです。」
私はなんだか恥ずかしくて、
黙々とパフェを作る。

「ありがとうございます。
早く結婚出来るように応援して下さい。」
翔さんは爽やかな笑顔を見せて、
上手にこなしてお客様をさばいてくれた。

「さすが翔さん、商売上手。」
パチパチと拍手して感心していると、

「果穂も、店に出てると声かけられる時とかあるのか?」
途端に心配症が滲み出るのでつい笑ってしまう。

「ふふっ、大丈夫だよ。私は、そんな目立たないから。」
そう言って安心させる。

たまにあるとか言ってしまうと、
きっと心配して出店の許可が出なくなってしまう。

「本当に?心配になって来たな。
果穂を守るボディガードでも雇うか。」
本気で考え出したから慌てて止める。

「いやいや、そんな人雇ったら売り上げ代より上回ってしまうから…。」
そんな事してたら、たちまち赤字になってしまう。

翔さんにコーヒーパフェを作って渡し、
キッチンカーの中でこっそり食べてもらう。
床にしゃがんで片膝を立てて座る様子が窮屈そう。

「翔さん、ちょっと外で休んで。窮屈でしょ?」
私もオレンジジュースを飲みながらしゃがんで、こっそり話しかける。

「それはダメ。果穂のボディガードは俺だから。」
そう言って近付いて来たと思ったら、不意に唇にキスをしてくる。何度も角度をかえて…。
こんな所でダメだよと、押し返したいけど力が出ない。
「……んっ…。」
顎に手を添えて、舌が差し込まれるから流石に胸を押して拒むと、

不服そうな顔をして、それでも解放してくれる。

「汗臭くて嫌か…。」
そう翔さんが呟くから、

「翔さんの匂い、むしろ好きですから大丈夫。誰かに見られたら恥ずかしいので…
お家に帰るまで我慢して下さい。」

そう言うと、ぎゅっと抱きしめられて
「今の言葉、…身体が反応しそうになった。」

びっくりして退く。

爽やかに笑って、何食わぬ顔でコーヒーパフェを再度食べ始める翔さんの横で、
私は1人赤面して顔を隠した。

その爽やかな笑顔と、突拍子も無い発言が180度違って思わず笑ってしまった。

「最近、果穂不足なんだ。
どれだけ俺が我慢してると思ってる?
笑い事じゃ無いんだからな。」

拗ねた様に言うから何だか可愛いと思ってしまう。
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