俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
前日も特に代わりなく、普段通りに夕飯を作って俺の帰りを待っていてくれた。

2人笑い合って楽しい夕飯を食べた。

次の日、今から帰るよといつも通りにメールして、普段は直ぐ付く既読がなかなか付かない事に、少しの不安を感じながら帰宅した。

玄関を開けた瞬間、いつも明るく照らされている廊下が暗い事に気付く。

どこか買い物にでも出かけたのか?

鼓動が若干速くなるのを抑えながらリビングへと向かう。
夕飯の準備はされていた。

昨夜、明日はカレーが食べたいと話した為、鍋の中にはチキンカレーが出来上がっていた。冷蔵庫にはサラダ、デザートのフルーツも…

洗面所、風呂、寝室、どこを探しても果穂だけがどこにも居ない……。

果穂の部屋は普段、プライベートだと思い、自分から足を踏み入れた事は無かったが、思い切ってドアを開ける。

無機質なゲストルームだった場所が、果穂が来てから、いつの間にか果穂らしい可愛らしい部屋に代わっていた。

ベッドには果穂が引越しの時に持って来た皇帝ペンギンのぬいぐるみ。

最近買ったばかりのドレッサー。

どこもかしこも、果穂がついさっきまで居たままの状態だ。
ドレッサーの上に手紙を見つけ、駆け寄り読む。

『少し出かけてきます。すぐ戻りますので、心配しないで下さい。』
それだけ書かれていた。

その隣には果穂のスマホが着信をつげて光っていた。
スマホにはもしもの為に果穂に内緒でGPSのアプリを入れてあると、亮太から聞いていた。

目の前が暗くなり足元から崩れ落ちる。

幸せが手のひらから砂の様にこぼれ落ちる感覚に襲われる。

次にすべき事を考え、何とか立ち上がりコンシェルジュに果穂がいつ外室したか確認を取る。

誰も会っていないと言うので防犯カメラの映像を探してもらう。

待つ事10分、待っていられず一階のロビーに降りて管理室に押しかける。

映像を一緒に探っていくと、いつも買い物に出かける様なスタイルで小さなカバン一つを持ち果穂が玄関を出る姿。

先のロータリーで黒い車に乗り込む姿が映されていた。

「この車の運転席アップ出来ますか?」
見るとどこかで見た顔だった。

父の秘書だ!

そう確信すると、居ても立っても居られずに父の会社に車を走らせる。

もう7年以上は訪れた事が無かった場所だ。

今後、2度と行く事もないと思っていた。

もし、そこに果穂が居るならば…願いを込めて早る気持ち抑えながら、父に電話する。
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