俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
頭の中に翔さんの顔が浮かんできて、涙が出そうになるのをグッと堪える。

翔さんに会いたい。心配させたくない。

「しかし、私は貴方を…彼女に協力してここまで連れ拐ってしまいました。
……既に罪を犯しています。
簡単に許される事ではない…」
少しの間の後、ポツリとそう呟く。

「今からでも大丈夫です。私が貴方の味方になりますから、お願いです。手と足の縄を解いて。」
後ろ手に縛られた縄は、手に食い込んでびくともしない。

「逃げないで下さいよ。
私はどうしてもお金が欲しい。
罪を犯してでも……。助けたいんだ…。」

「誰を?誰を助けたいんですか⁉︎」

「…離婚した妻を……。」

彼には彼の事情がある事をを知った。

三年前に別れた奥さんとの間に、16歳の息子さんと13歳の娘さんがいる事。

最近元奥さんに血液の病気が見つかり、高額な医療費が発生していると言う。

子供達と年老いた両親だけではお金が回らず、ついに子供達が助けを求めに来たと言う。

「私は仕事ばかりの人生で、家族を顧みず気付けば失っていた……。
それなのに…子供達が私を頼って来てくれた。まだまだ子供達には母親が必要なんだ!

なんとしても、元妻を助けてやりたい。」
涙ながらに語った彼の理由が辛くてもらい泣きしそうになる。

高見沢さんはそこでやっと縄を解いてくれる。
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