俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
「そうか…そうなのかもな。」
彼は前を見つめたまましばらく沈黙する。

「来て良かった。君と話せて良かったよ。
名前教えてくれる?」

はっ!としてまだ名乗って無かった事に気付く。
「ごめんなさい名乗り忘れてました…。
間宮果穂です。果実の果に、稲穂の穂と書いて…。」

「うん。可愛い名前だ君にとても合っている。」
そんな事を初めて言われてただ瞬きを繰り返す。

「そろそろ帰るね。
…君が嫌じゃ無ければまた会いに来てもいいか?」

「全然嫌では無いです…けど、東京から大変じゃないですか?」
つい疑問に思った事を言ってしまう。

「そのぐらい大した事無いよ。君と話せて癒されたから。」
やっとこっちを見て笑ってくれる。

「あっ…これも嫌じゃなかったらでいいんだけど……連絡先交換してくれる?」

嫌では決してない…。

この人の癒しに少しでもなれたらと思い、ポケットのスマホを取り出してコミュニケーションアプリを開く。

「ありがとう…。」
少しびっくりしながら、彼もスマホを出して登録する。

「忙しいのに足止めさせてごめんね。
じゃあ、俺は行くから…サンドイッチ全部食べて。
ちゃんと水分補給も忘れないように。」
そう言って彼は手を軽く振って爽やかに去って行った。

私は慌ててペコリと頭を下げて見送る。

彼に握られた手を見つめながら、しばらくベンチから動けなかった。
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