第3章めざせ転移門!★城下編。恋愛異世界令嬢は成り上がる!
岩の竪穴
シンパクが休憩にと扉を開けた木造の小屋は、儀式の控え小屋というだけあって、中には祭祀の用具が整えられ、十分な広さがあった。
「禁足地に蓋をするかの如く、巨大な岩があるのですじゃ。その岩を開けて、儀式では聖堂から遣わされる神官様がマザー・エリベスに祈りを捧げてくださる。」
小屋の中で休憩をした一行は、そのまま禁足地になる『重なりし岩』を目指して歩く。
『重なりし岩』は、禁足山の頂き付近にあるのだと、シンパクは先頭から説明した。
「これは、、、」
一行の1番後ろから、ルークが思わず声を漏らすのも無理はなく、山頂近くに巨大な岩が2つ。不自然な格好で重なっているのだ。
「まるで、、」
聳え立つ重なりし2つの巨大な岩。その岩達を神聖な空気で包むのは、原木を組んだ細い門。
(トリイとタルチョの融合みたい、、)
しかも巨岩は、まるで息をしているみたいな一定の膨張と縮小を緩やかに繰り返している。
「こりゃ、どてかいヒナか、赤子みていだな、、」
マイケルの前で、見上げるレサの傍らで、ラジも腕を組んで巨岩を見つめて呟いた。
「マイケルしゃん、いろいろなフィラフト、ヒラヒラしてるの〜。」
そしてヤオは、ルッカの肩から、木の門から伸びる紐に付けられた布に手を伸ばそうとしている。
日本で見る『鳥居』の形に組まれた木の門には、幾つもの紐が取り付けられているのだ。
(なびく布が、風で読経するタルチョに見えてくるからなのか、大陸を思い出させるのよね、、)
かつてマイケルが住んでいた世界での山岳信仰を思わせる布を手にして、、マイケルは布の表面をなぞる。
そこにはウーリュウ藩島の新年を飾るフィラフトに似た文様が、素朴な筆跡を残しながら描かれていた。
「風の力が、我々神官の祈りをマザー・エリベスへと循環させるようにと、陣を布に施すのです。」
パパ・ドゥシェラが、両手で岩を持ち上げるポーズをとりながら、巨岩に唖然とする皆の前で、厳かに詠唱を始める。
ドゥシェラの声が山頂を拭き上げる風に乗って、空へと吸い込まれる。
そんな気がした時、突然巨岩がブーーーーーンと音を鳴らしながら虚空へと浮かび上がった!!
マイケル達は更に思いもしない光景に、目を細め、パパ・ドゥシェラの様子を見入る。
「なるほど、路が下にあるのか。」
巨岩が虚空に浮かび上がると、禁足山の傾斜に、ポッカリと竪穴が出現したのだ。
ラジの呟きに、パパ・ドゥシェラが岩を操りながら、
「どうぞ今の内に中へとお進みください。皆が入りましたらば、再び岩にて塞ぎますゆえ。」
皆を竪穴の中へと誘導した。普段の儀式は、神官が竪穴に祈りを捧げるだけだとも、ドゥシェラが伝える。
「うぇ?!外から閉めるだぁ?なんだかいい気がしねぇなあ。」
レサがいつだったか、もともと狭い場所が苦手だといっていた事を、レサの様子からマイケルは思い出した。
「ドゥシェラ様の陣は、魔力陣とは少し違うのですね。」
ドゥシェラの横をすり抜け、シンパクやラジ、レサとヤオを乗せたルッカに続いてマイケルも竪穴に入る。マイケルの後ろからハーバナが、ドゥシェラに向かって質問を投げかけた。
「私共の使うのは魔力とは違い、神力ですからね。ハーバナ殿から見れば、珍しいのかもしれませなぬ。ではルーク殿が最後に入りましたらば、閉めましょう。」
(冒険者ルークとして、どうやらドゥシェラは王弟将軍を扱うんだ、、)
ハーバナからの問いにドゥシェラが答えた内容を気にしつつも、マイケルはルークの様子を伺う。
「、、、、」
一瞬、竪穴に入り込んできたルークの視線が、マイケルを捉えた。慌ててマイケルは正面に視線を戻すと、自分のポケットに入れている石を握り締める。藩島城で『王弟将軍』としてルークに会って以来、マイケルはルークとどう接すればいいのか考えている。
(もう少しすれば、また何時もの様に話せると思う。だから、今はちょっと距離をおきたい、、)
マイケルの手の中には、ラジ達が背負う鞄の中にも入っている『水龍の骨』がある。
この『水龍の骨』を発見した事が、唯一此の世界に存在する自信になり、拠り所になっている。
いつの間にか、マイケルの中で自分を卑下する気持ちが生まれていた。
「それでは岩を下ろしましょう。」
ドゥシェラが徐々に巨石を下へと下ろしていくと、竪穴の中に一瞬漆黒の闇が訪れた。
マイケルにはその闇が、今は有り難かった。
「禁足地に蓋をするかの如く、巨大な岩があるのですじゃ。その岩を開けて、儀式では聖堂から遣わされる神官様がマザー・エリベスに祈りを捧げてくださる。」
小屋の中で休憩をした一行は、そのまま禁足地になる『重なりし岩』を目指して歩く。
『重なりし岩』は、禁足山の頂き付近にあるのだと、シンパクは先頭から説明した。
「これは、、、」
一行の1番後ろから、ルークが思わず声を漏らすのも無理はなく、山頂近くに巨大な岩が2つ。不自然な格好で重なっているのだ。
「まるで、、」
聳え立つ重なりし2つの巨大な岩。その岩達を神聖な空気で包むのは、原木を組んだ細い門。
(トリイとタルチョの融合みたい、、)
しかも巨岩は、まるで息をしているみたいな一定の膨張と縮小を緩やかに繰り返している。
「こりゃ、どてかいヒナか、赤子みていだな、、」
マイケルの前で、見上げるレサの傍らで、ラジも腕を組んで巨岩を見つめて呟いた。
「マイケルしゃん、いろいろなフィラフト、ヒラヒラしてるの〜。」
そしてヤオは、ルッカの肩から、木の門から伸びる紐に付けられた布に手を伸ばそうとしている。
日本で見る『鳥居』の形に組まれた木の門には、幾つもの紐が取り付けられているのだ。
(なびく布が、風で読経するタルチョに見えてくるからなのか、大陸を思い出させるのよね、、)
かつてマイケルが住んでいた世界での山岳信仰を思わせる布を手にして、、マイケルは布の表面をなぞる。
そこにはウーリュウ藩島の新年を飾るフィラフトに似た文様が、素朴な筆跡を残しながら描かれていた。
「風の力が、我々神官の祈りをマザー・エリベスへと循環させるようにと、陣を布に施すのです。」
パパ・ドゥシェラが、両手で岩を持ち上げるポーズをとりながら、巨岩に唖然とする皆の前で、厳かに詠唱を始める。
ドゥシェラの声が山頂を拭き上げる風に乗って、空へと吸い込まれる。
そんな気がした時、突然巨岩がブーーーーーンと音を鳴らしながら虚空へと浮かび上がった!!
マイケル達は更に思いもしない光景に、目を細め、パパ・ドゥシェラの様子を見入る。
「なるほど、路が下にあるのか。」
巨岩が虚空に浮かび上がると、禁足山の傾斜に、ポッカリと竪穴が出現したのだ。
ラジの呟きに、パパ・ドゥシェラが岩を操りながら、
「どうぞ今の内に中へとお進みください。皆が入りましたらば、再び岩にて塞ぎますゆえ。」
皆を竪穴の中へと誘導した。普段の儀式は、神官が竪穴に祈りを捧げるだけだとも、ドゥシェラが伝える。
「うぇ?!外から閉めるだぁ?なんだかいい気がしねぇなあ。」
レサがいつだったか、もともと狭い場所が苦手だといっていた事を、レサの様子からマイケルは思い出した。
「ドゥシェラ様の陣は、魔力陣とは少し違うのですね。」
ドゥシェラの横をすり抜け、シンパクやラジ、レサとヤオを乗せたルッカに続いてマイケルも竪穴に入る。マイケルの後ろからハーバナが、ドゥシェラに向かって質問を投げかけた。
「私共の使うのは魔力とは違い、神力ですからね。ハーバナ殿から見れば、珍しいのかもしれませなぬ。ではルーク殿が最後に入りましたらば、閉めましょう。」
(冒険者ルークとして、どうやらドゥシェラは王弟将軍を扱うんだ、、)
ハーバナからの問いにドゥシェラが答えた内容を気にしつつも、マイケルはルークの様子を伺う。
「、、、、」
一瞬、竪穴に入り込んできたルークの視線が、マイケルを捉えた。慌ててマイケルは正面に視線を戻すと、自分のポケットに入れている石を握り締める。藩島城で『王弟将軍』としてルークに会って以来、マイケルはルークとどう接すればいいのか考えている。
(もう少しすれば、また何時もの様に話せると思う。だから、今はちょっと距離をおきたい、、)
マイケルの手の中には、ラジ達が背負う鞄の中にも入っている『水龍の骨』がある。
この『水龍の骨』を発見した事が、唯一此の世界に存在する自信になり、拠り所になっている。
いつの間にか、マイケルの中で自分を卑下する気持ちが生まれていた。
「それでは岩を下ろしましょう。」
ドゥシェラが徐々に巨石を下へと下ろしていくと、竪穴の中に一瞬漆黒の闇が訪れた。
マイケルにはその闇が、今は有り難かった。